シナリオ

プロローグ

取材のため、獣人の国であるコロナ合衆国を訪れた主人公・ライト。
持ち前のトラブル体質によって、さっそく不審人物として公安に連行されてしまう。
物語は公安捜査局パンズヴィル支局の取調室でSIUのチーフであるユージン・フォックスから取調べを受けるところから
始まる――

ライト 「その事件……『ルー・ガルー事件』のことだろ? 俺はその取材のために来たんだ」

ルー・ガルー事件――ここ1ヶ月の間に、国境付近で3体の変死体が発見された。
被害者はいずれも人間で、発見場所は墨海。
国内の変死事件として処理されるものと思ったが、そうはいかなかった。
尖った爪で切り裂かれた痕、鋭い牙で噛みつかれた痕――
どの死体にも、獣に襲われたような形跡が残されていて
墨海の警察が公安に協力を求め、共同捜査を行うことになった。

ライト 「俺も真相を知りたいって側だ。事件に関わってなんか――」
ユージン 「ルー・ガルーというのは“オオカミ男”を意味する言葉……
 さも獣人が犯人であると決め付けるようですね」
ライト 「お……俺がつけたわけじゃ……」
ユージン 「マスコミは、そうやって憶測で騒ぎ立てるのがお好きですが
 犯人をあおる要因にもなるので、できれば撤回してもらいたい」
ライト 「…………。なら、情報をくれ」
ユージン 「…………」
ライト 「あんた、SIUの人だろ? ルー・ガルー……っと、例の事件を担当してるのはあんたたちだよな?」

――SIUっていうのは「特別捜査班」のこと。
公安捜査局の中でも、特に重要度の高い事件を取り扱うエリート部隊だ。

ライト 「今、捜査はどこまで進んでて、あんたたちはどう考えてるんだ?」
ユージン 「なぜ貴方にそんなことを――」

突然、室内に大きな音が響き渡った。

BJ 「ちょっとちょっと何やってるんですか」
レオ 「いたたた……ド、ドアにぶつかって……」
BJ 「あれだけ前見て歩いてくださいよって言ったのに……」

ドアが開き、ふたりの捜査官が入ってくる。

BJ 「お呼びですか、チーフ」


(中略)


ライト 「脱出成功~っと♪」

取調室から少し行ったところで、物陰に身を隠す。
すみやかにここを離れるべきなのはわかっているが、そうはいかない。

ライト (ジャーナリストとして、このチャンスを逃すわけにはいかねーよな)

事件に関する情報を得られないかと、捜査官たちの様子をうかがう。すると――

捜査官 「そもそも、獣人の仕業だっていうなら国境の問題はどう説明するんだよな?」
捜査官 「刑務所より厳重なセキュリティをどうやって突破したんだって話だよ」
ライト (おっと、さっそくか……)
捜査官 「……まあ、『エリス』の仕業だって言うならわからなくもないが」
ライト (……エリス?)
捜査官 「あいつら、不法入国の手引きなんかもやってるんだろ?
  そういや……10年前にもこんな事件があったよな」
捜査官 「ああ、こっちで獣人が拉致されて……って事件だっけ? その死体が墨海で見つかったとか
  あれは確か、エリスが国境の職員と繋がってたとかいう話だったよな?」
ライト 「…………」
??? 「おい」
ライト 「!!」

腹の底に響くような声が降ってきて、びくりと肩を跳ね上げる。

トラヴィス 「そこで何をしている」

振り返ると、そこには人間離れした大きさのオオカミの獣人が立っていた。
金色に輝く鋭い眼光に見下ろされ、ガラにもなく言葉を失う。
何か言わなければと思った時、その視線が俺のカメラを捉えた。

トラヴィス 「……ジャーナリストか?
 ハイエナが……。どうやってここへ入り込んだ」


(中略)

プロローグ:イラスト


ライト 「なあ、俺のカバン取ってくれないか」

壁に沿って並んでいる屈強な獣人たちに声をかける。
捜査官の数も増やされ、俺ひとりに4人がかりで見張り番だ。

ライト 「なんかちょっと熱っぽくてさ……カバンに薬入ってんだけど」

捜査官たちは、ぴくりとも反応を示さない。まあ、当然の対応だとは思うけど……。

ライト 「コレ嘘じゃねーから。ほんとなんだって」

幼い頃から、毎日欠かさず飲んでいる薬があった。
生まれながらの虚弱体質で、飲み忘れると微熱が出る。
1日3回の内、昼の服用時間を過ぎていて、すでに熱っぽさを感じ始めていた。

ライト 「――なあ。……おいってば。
わかった。じゃあ、誰でもいいからカバンの中探ってくれ」
捜査官 「「…………」」
ライト (はあ……どんだけマジメなんだよ……)

何度呼びかけても返事はなく、呆れてため息をつく。……が、その時ひとりの捜査官が動いた。

ライト 「お? 取ってくれんのか?」

ぱっと顔を輝かせるが、捜査官はカバンの前を通り過ぎる。

ライト 「……?」

目の前で足を止めた捜査官を見上げる。 どこかギラついた瞳と視線がぶつかった。

ライト (……なんだ?)

獣人だからわかりにくいが、心なしか顔が赤い。
うっすら開いた唇から、ハァハァという荒い息遣いも漏れている。
妙な空気を感じ、じわじわと危機感が込み上げてきた。
見れば、他の捜査官たちも、すぐそばまで近づいてきている。
視線を下へ戻すと、ヤツらの脚の間が異様に膨らんでいるのがわかった。

ライト 「な……っ、何だよお前ら!」

警戒心をあらわにして、周りを取り囲んでいる捜査官たちを睨みつける。

ライト (は? 意味わかんねえ……なんで、勃ってんだよ……)

いったい何が起きたんだ? どうしてこんなことに?
刑務所の中ならこういうことも起こりうるかも知れないが、ここは取調室だ。
ワケがわからなかったが、自分が危険な状況に置かれているということだけは理解できた。
にじり寄ってくる脅威から逃れるため、俺はとっさに立ち上がる。

ライト 「っ、退け!」

捜査官たちを体当たりで押し退け、逃げ出そうと試みるが――